10. 誰でもいいなら

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「技術的にお前には無理だよ。それに泊まりだし、2日は仕事休めないだろ」 梓がため息を吐いたとき、笑ったのがいけなかった。 それはまるでごねた子どもでも相手にするような——対等な者に向ける笑みではなかった。 「あの人がいるから、俺は邪魔ってことですか」 正気が、慌てて羽交い締めにしてくるが、一度暴走した感情はもう抑え込むことができない。 掴まれた瞬間に砕け散り、飛沫となって梓に向かう。 そしてその一歩後を、後悔がついてきたが、次の飛沫に飲まれてしまい、制御には至らなかった。 「俺がいると、須崎さんとセックスできないから?」 「なに言ってんだ、お前」 「この前も、神無月小屋の従業員部屋でやってましたよね。声響いてましたよ」 その表情が一瞬、羞恥で歪む。 彼がこのまま困惑を引きずったままでいたら、文太は我に返って謝っていただろう。 しかし不運にも、梓は文太を正気に戻してはくれなかった。 彼はいつもの冷たい表情に戻ると、まるで開き直ったように腕組みをした。 「だとしたら何。お前に関係あるの?」 部外者のくせに。 改めて突きつけられ、屈辱感だけが浮き彫りになる。 関係ない。 関係ないなら、いっそのこと————
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