2人が本棚に入れています
本棚に追加
もっときれいになれるよ。
裕美によれば、所作の美しさというのがあるという。裕美の祖母はお茶の先生で、仕草や振る舞いが美人を倍にすると教わったそうだ。都子も知っているが、気品のある素敵なお祖母ちゃんだと思っていた。
裕美の言う通り、教室のドアを丁寧に開け閉めする。家の襖もそっと。そう、アルマイトくんの蓋を開けたり閉めたりするときのように。ホーローさんにお豆腐を入れたり取り出したりするときのように。
ゆったり余裕をもって歩く――いや、それは元々得意だ。のろい……って、短所だと思っていたけれど。
「背筋をピンとして優雅にふるまうの。それ、都子ほど様になる子、いないよ」
「あたし、裕美ほど褒めるの上手い子知らないよ」
裕美に褒められれば褒められるほど頑張りたくなる。そう言うと裕美は本当に嬉しそうに笑う。それがまたとってもカワイイ笑い方なのだ――ああ他にもっと言い方は。
裕美をちゃんと褒めたい。裕美に気持ちを全部伝えたい。もどかしさが都子に辞書を引いたり、本を読んで言葉を探させるようになった。
最初のコメントを投稿しよう!