ラブレター

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ラブレター

それからしばらくした朝、下駄箱に封筒が入っていた。3通も。 果たし状? あ、何かのプリント忘れたの誰かが入れてくれた? いややや、こんなかわいらしい封筒に? 中身を取り出してみたら、――いわゆるラブレターというやつだった。……今まで全く無縁だったがために、意外過ぎて想像が追いつかなかった。 あわわわわ。触っていいのかこれ。誰か別人宛じゃ、と掌に何度も弾ませた挙句、床に取り落とし。そんな挙動不審は周りの注目を嫌でも引いた。 いや、拾う所作も美しく、足を揃えて手先から……なんてやっても遅かった。 教室に入ると、もう知れ渡っていて、みんながニヤニヤしていた。 「フン、オトコ女。ウド大木ののんびり虫」 出た氷室。……でもいつもは真正面から直撃してくるのに。今日はそっぽを向いている。鉛筆削りの横でがしがし黒板消しをパンパン叩きまくりながらの言い様だ。 カーン。ついに都子の頭にゴングが鳴った。 都子はつかつかと進み出て氷室の前に仁王立ち。そして見下ろした。ああそう、昔から都子と背の差があった。何度も「デカ女」とか囃された。恥ずかしくて悔しくて、言い返したことはなかった。 「あんたって黒板消しとか鉛筆削り以下よね。役に立つ音、発したのを聞いたことない」 氷室が詰まった。二の矢三の矢が飛んで来るかと思ったが、奴は沈黙したまま口をパクパクしただけだった。 ――勝った。 もっと。もっといろいろ言ってやりたい。豊富な語彙力が欲しい。 ……ホーローさんの言う通り、あのラブソング男がその秘訣を知ってるかも。 興味が高まって、その日の帰り、都子は速足になった。速いことに遅れを取らないのは初めてだった。
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