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カラスの名推理
カラス「君たちはどんぐりの季節になるたびに取りに行きますからね。そこに少ししかないどんぐりとここに来たという事実だけで大体わかります。しかも君たちは小食ですし、二人ともはしゃぐと行儀が悪くなりますからね。君たちのくちばし周りがきれいなのを見ると、お土産の分まで食べつくしてしまったわけでもなさそうだったので、どんぐりをとることができなかったと考えるべきでしょう。その原因が外敵だった場合、もっと騒ぎになっているだろうと推測してこの結論に至りました。あってますか?ムクドリさん、スズメさん。」
スズメ「…大正解。」
ムクドリ「相変わらずすげー…。」
カラス「当たっていたようで何よりです。」
スズメ「それで、原因は?」
カラス「今断定するには根拠が少なすぎるので…、もう少し教えてくださいませんか?些細なことでいいので。」
ムクドリ「そういえばオシドリさんも来ていたよな。」
スズメ「うん。僕らよりも早かったような…」
ムクドリ「でもあの鳥たちもほとんど取れてないって言ってたぜ。」
カラス「彼らのような水鳥なら水中でも…いや、そういうことか。」
スズメ「何かわかったんですか?」
ムクドリ「まさかあんた、あの夫婦が原因だっていうんじゃないですよね!?」
カラス「さすがに違いますよ。夫婦で森のどんぐりを食べつくしたとはとはさすがに考えにくい。しかも、前の男の鳥とは違い、新しいオシドリさんの旦那さんは小食のようですしね。」
スズメ「あっ、カラスさんそのこと知ってたんだ。」
カラス「ええ。」
ムクドリ「じゃあ、誰が犯人なんだ?」
カラス「それがまず間違いです。」
ムクドリ「え?」
カラス「犯人がいるというのがそもそもの間違いなんですよ。」
スズメ「そういえば、僕たちの目的は犯人じゃなくて原因探しだったね。」
ムクドリ「てことは。」
カラス「ええ。最初からあの森にはどんぐりがほとんどなかった。と考えるのが妥当でしょう。」
スズメ「そーだったんだ…。」
ムクドリ「でもなんで急にそんなことになったんですか?」
カラス「ここからは憶測になるのですが、去年はどんぐりが豊作でしたね?」
スズメ「はい。去年はすごかったです。」
ムクドリ「それでお前太ったんだもんな。」
スズメ「あうう…。」
カラス「話を戻しますね。実はどんぐりが豊作になる時期には波があるんです。本来であれば森にはいくつもの種類のどんぐりが実り、常に一定の量のどんぐりが落ちるはずなのですが…。」
スズメ「ふむふむ。」
カラス「あの森、なぜかほとんどの木がマテバシイなんですよね。」
スズメ「マテバシイ?」
カラス「はい。おそらく、今年はマテバシイが不作の年だったのではないでしょうか。ほら、君たちの持ってきてくれたこのどんぐりは、マテバシイではなくコナラですし。」
ムクドリ「ですしって言われても…、わかんねー。」
スズメ「去年のってどんなんだっけ?」
カラス「見分けるのは難しいと思いますよ?…とにかく、結論としては最初から今年はどんぐりがなかった。ということになりますね。」
ムクドリ「すげー!あんたやっぱ頭いいっすね!」
スズメ「主人公…僕なのに…。」
カラス「ふふ、ありがとうございます。」
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