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振り返ったら家の前だったことに、ではない。
エレンと大きな黒猫・ノアが、キスをしていたからだ。
「ッ……!? エっ、エレン!?」
テオはエレンを両手で掴み、慌ててノアから引き剥がした。しかしエレンはふわふわの全身を使って暴れる。
「なによ、離してよチビ!」
「チ……!?」
思わぬ暴言を受け、テオは目を丸くした。テオのコンプレックスに的確にダメージを与えたエレンは、緩んだテオの手から降りてベッと舌を出し、再びノアに擦り寄った。
ノアは勝ち誇ったような表情でテオを嘲笑う。
「テオ、お前はエレンにふさわしくないよ」
「お、お前こそ! 俺とエレンが何年の付き合いだと思ってんだよ!?」
テオは突然現れた恋敵に牙を向く。少なくとも嫌われていない自信はあった。そうでなければ10年以上も友人でいるものか。しかし友愛と恋愛は別物。やや自信なさげなテオにエレンが追い討ちをかける。
「私、もっと背が高くてかっこいい人が好みなの」
「な……っ、なに言ってんだよ今さら」
テオはエレンに向かって泣きそうな目を向ける。二足歩行の猫は前足で自分の目の下を引っ張るような仕草をした。
「ノアくんの身長超えてから出直してきなさい!」
そう言い捨て、エレンはノアとどこかへ行ってしまう。
「待て、待てってばエレン!!」
テオはその背中を追いかけるが、一向に追いつく様子がない。それでも走り続けると、エレンたちが通ったはずの道が急に途切れ、足を踏み外した。
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