魔晶華密輸狂騒曲

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カンパニーのドアを開けて現れたのは、オレンジがかった金髪を2つに結び、カンパニー指定のブレザーの袖を腰に結びつけているという少しだらしない印象を受ける女性だった。まだ声をかけていないが、どこか溌溂と楽しそうだ。クエストが張り出されているボードをしばし眺めたかと思うと、窓口のアイクを見つけて小走りで駆け寄ってきた。 「アイきゅんちーっす!今日はアイきゅんは窓口なんだね、新せーん!」 「こんにちは、ステラさん」 ステラ=マイヤ。高いテンションとチャラい見た目に対し、常人を凌駕する炎魔法の使い手である。カンパニーの社長にも認められているほどで、四人いる特任職員の一員だ。 「今日は非番のはずでしたが…」 「今日はローちゃんがマオルブルフの魔晶華調査から帰ってくる日っしょ?お互い街に長居しないんだし、たまには王都でお出かけするため待ち伏せってワケ!」 「マオルブルフに…そういえばそうでしたね」 アイクはスケジュール帳に目を通すと、確かに「ローちゃん」と呼ばれる職員の予定到着日は今日だった。 先の事件で、魔晶華の搬送元はマオルブルフだった。何か情報があるかもしれない。アイクはそう考えると、帳簿を閉じながらステラに話しかけた。 「丁度よかった。ステラさん、僕もロータスさんに話があるんです。ここで待ちますか」 「もち!話がわかるねぇ。じゃあコーヒーちょーだいなっと」 そう言うとステラはカウンターを潜って中に入ってきて、返事も聞かずにコーヒーを淹れ始めた。始めから長居するつもりだったようだ。自由気ままで敬語も使わないが何故か怒る気にはなれない、それがステラの不思議な魅力であった。
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