卒業の日に

1/10
前へ
/13ページ
次へ

卒業の日に

高校の卒業式、僕は彼、中谷響と待ち合わせをしていた。 卒業式のあと、みんな仲間うちで写真を撮ったり、話をしていて誰も帰る気配はない。 僕はそこには参加せずに彼に話があるからと言って、一緒に帰る約束をしていた。 彼は部活の荷物があるから部室にいくから、と言っていた。 吹奏楽部だった彼の部室は3階の奥の音楽準備室だ。部員じゃない僕もよく遊びに行っていた思い出の場所でもあった。 教室を出て、3階へ上がろうとしていた階段の途中でクラスメートに声をかけられた。 「あれー、長谷川くんはみんなと一緒にカラオケ行かないの?」 と尋ねられた。 「あーうん、ちょっと用事があって」 と適当に答えると 「最後だし行こうよー。場所わかる?遅れても大丈夫だから、ねっ」 と執拗に誘ってくる。 (はっ、今はそれどころじゃないんだって!) 曖昧にうなずきながら、ちょっと急いでいるからと言って、その場から3階に向かって駆け上がる。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加