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卒業の日に
高校の卒業式、僕は彼、中谷響と待ち合わせをしていた。
卒業式のあと、みんな仲間うちで写真を撮ったり、話をしていて誰も帰る気配はない。
僕はそこには参加せずに彼に話があるからと言って、一緒に帰る約束をしていた。
彼は部活の荷物があるから部室にいくから、と言っていた。
吹奏楽部だった彼の部室は3階の奥の音楽準備室だ。部員じゃない僕もよく遊びに行っていた思い出の場所でもあった。
教室を出て、3階へ上がろうとしていた階段の途中でクラスメートに声をかけられた。
「あれー、長谷川くんはみんなと一緒にカラオケ行かないの?」
と尋ねられた。
「あーうん、ちょっと用事があって」
と適当に答えると
「最後だし行こうよー。場所わかる?遅れても大丈夫だから、ねっ」
と執拗に誘ってくる。
(はっ、今はそれどころじゃないんだって!)
曖昧にうなずきながら、ちょっと急いでいるからと言って、その場から3階に向かって駆け上がる。
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