卒業の日に

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ノイズキャンセリングなヘッドフォンをしているからかこちらには全く気づかず没頭している彼は、卒業式でも歌われた曲を弾いていた。 照れくさくなる歌詞なのに、後輩たちが歌うのを聴いていた時よりも、ピアノのメロディラインにぐっときてしまう。 聴き入っていると、卒業式で演奏した吹奏楽部の後輩たちがザワザワと集まってきてしまった。 「あれ、響先輩じゃないの?」 「何でピアノ弾いてるの?」 とざわざわと後輩たちがこそこそと話している。 ピアノの旋律は、まだ開花には早い桜の曲に流れるように変わっていった。 かなりの人数が集まってきた中、みんな静かに聴き入っていた。まるでピアノの独奏会のように。 響のピアノを聴いていると、厳かな卒業式よりも、最後のクラスのホームルームよりも、僕はこの場所から今日で卒業していくことを感じてしまった。 そう、これが僕と響の一番の思い出だから。 そして、桜の曲から、響が懐かしい曲を弾き始めた。
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