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前の曲から、流れるように次の曲の前奏が始まる。
あっ、この曲……。
また、学祭の思い出の曲を掘り起こしてきたのか、またなんでこの曲弾くか。
と僕はなんともいえない思いがこみあげてきた。
ほとんどののバンドがカバー曲ばかりを演奏している中、学祭のトリでもある後夜祭で演奏したオリジナル曲。
これ、先輩が詞をかいて、それに曲をつけただけだよって、後でさらっと言っていたけど。
あの時、ピアノの伴奏もソロの間奏もすごくかっこよくて、夕闇と煌々としたライトが照らされた野外ステージを僕はただただ見ていた。
あのステージで演奏をさらっとやってのける彼が羨ましかったし、かっこよくて、憧れというか、もう、ため息しか出てこなかった。
彼と僕の高校生活の原点を思い起こさせるピアノの演奏だった。
曲が終わり、ペダルを離して、ピアノの残響音が消えていった時、周りから拍手が起こった。
いつの間にか部屋の中は、卒業式後の片付けにきていた吹奏楽部の生徒たちが集まっていて、響のピアノの演奏を見ていた。
それまで、何も気づかず(いつものことだけど、どうして気が付かないのかと思ってしまうのだが)一心不乱に弾いていた彼は、後ろをふり返って、びっくりした表情を見せた。
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