卒業の日に

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「なあ、また、バンド活動やらないの?」 「うん、やりきったからもういいかな」 彼は、アイスコーヒーのストローをくるくる回しながらあっさり答えた。 「なんで?」 「えっ、なんでって、もうやり切ったからもういいかなって」 僕は、うーんと唸ってしまった。 (いや、ここで負けちゃだめだ) 「なあ、またさあ、一緒にやらない?」 「うん、やらない」 (即答かよ!) 「えーなんで?さっき弾いてたのを聴いてたけど、まだまだやりたいことあるよね?」 「ないよ」 (なんでそんなにあっさり言うか!) もうなにを言ってもだめなのか。 と僕はこのてこでも動かなさそうな彼の気持ちをどうにか動かしたくて、考え込んでしまった。 グラスの中の氷が溶け始めて、周りに水滴がつき始めていた。
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