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2 大切な話をする相手をまちがえている
大原まり子が看護学部の二年、田村省吾が工学部教養課程一年の時だった。
地元のMオーケストラのコンサートで、横顔の奇麗なまり子は人目を惹いた。正面から見ると少々丸顔で小太り気味の中肉中背、健康そのもので奇麗だった。
省吾は、親しい二年生からまり子を紹介された。
その後、まり子の失恋の相談にのったのがきっかけで、友人以上で恋人になりきれない付き合いがはじまった。こまった時は、何所にいても連絡しあう不思議な関係だった。
工学部二年になる前、まり子が三年になる前の春休みだった。
まり子が大学の女子寮からアパートへ引越す時、看護学部の同期の友人が何人も手伝いに来るというので、省吾は引っ越しの手伝いに行かなかった。
そのことをまり子は母親に話し、
「母から、引越しの手伝いに来ないような相手と付き合っているのか、となじられた」
と省吾に話した。
まり子は省吾との付き合いを恋愛の対象として、すべて母親に話していたらしかったが、彼女から省吾に意思表示はなかった。
まり子は、大切な話をする相手をまちがえている。
それ以来、省吾はまり子と連絡をとっていない。
(了)
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