2人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
白い桜
まだ肌寒くて、梅が咲いていた。
卒業式──ナツキは、いなかった。
その日、消えてしまったから。
うつしても、よかったのに。
遺族曰く「白い桜が見たい」と、今際の際に言っていたらしい。皆首を傾げていた。
俺にはわかる。ナツキが、あの春を卒業できないままいったことも、俺も……きっと同じだということも。
『探してくれるの』
水滴を1滴、手のひらで受け止めた。
「俺も、白い桜が見たいよ」
白い桜を見るために、君との春を思い出す。
俺は君と桜を探す。
最初のコメントを投稿しよう!