白い桜

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白い桜

 まだ肌寒くて、梅が咲いていた。  卒業式──ナツキは、いなかった。  その日、消えてしまったから。  うつしても、よかったのに。  遺族曰く「白い桜が見たい」と、今際の際に言っていたらしい。皆首を傾げていた。  俺にはわかる。ナツキが、あの春を卒業できないままいったことも、俺も……きっと同じだということも。 『探してくれるの』  水滴を1滴、手のひらで受け止めた。 「俺も、白い桜が見たいよ」  白い桜を見るために、君との春を思い出す。  俺は君と桜を探す。
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