2 ベニスの商人

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2 ベニスの商人

 ドライブに出かけた。  上信越の国立公園を巡り、夕刻、宿泊ホテルへの帰路についた。  途中、街道筋に、ラブホテルがあった。  どういうホテルから知らない子どもたちは 「わあっ、お城みたい。泊ってみたいなあ-」  とはしゃいで、車窓を流れるホテルの風景を見ていた。  私は、一つのホテルの看板をみてギョッとした。  看板に「ベニスの商人」とある。  あの「ヴェニスの商人」ではなく「ベニスの商人」である。 「ウワッ、何てこと・・・・」  私はそこまで言いかけて口を閉ざした。  私は乱視だったのを忘れていた。  運転で疲れた私の目に、黄昏時の風景は二重に見えることが多い。  この日は日中の太陽が眩しかったため、目の疲れが酷く、濁点の付いた文字が、半濁点の文字に見えていた・・・。  (了)
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