4.母の実家の猫の思い出 その2

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4.母の実家の猫の思い出 その2

 母方の祖父母宅の最後の猫は、トラという片目(右目)が見えなくなった猫である。  祖父母はすでに他界しているが、思い返して計算してみると、トラは祖母が70代前半まで生きていたのではないかと思われる。  目が見えなくなった原因は、何らかの事故だった。  不幸にも眼球を怪我して、辛うじて治りはしたが、瞳は濁ったままだった。  そしてそれ以降、不思議なことに、トラは目が見えないほうの右側のヒゲを、ほぼ根元からすっぱりと切り取ってしまった。  猫が自分のヒゲをどうやって切ったのかは不明である。これは祖母も不思議がっていた。  ヒゲの根元が、1ミリか2ミリくらい残っていたから、抜いたのではなさそうだった。 (もしかしたら、中には抜いたヒゲもあったかもしれないが。)  でも、人間が手を加えていなかったのは確かだと思う。  目が見えないなら、その分をヒゲで補わなくていいのだろうかと考えたこともあるが、トラにとってはこの方が都合が良かったのだろう。
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