4.母の実家の猫の思い出 その2

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 そして、このトラの片側しかない大事なヒゲを、私は抜いてしまったことがある。  小学生高学年の頃のことだ。  部屋には、私とトラしかいなかった。  多分、冬休みか春休み中で、うちは両親共働きだったから、私は祖父母の家に行っていたのだと思う。  祖母は台所にいた。祖父は多分、田んぼか畑に行っていた。他の猫達もどこかに行っていた。  トラは、コタツ布団の上に、腹を付けて座って休んでいた。  私は、魔がさしたのだと思う。  トラの左側のヒゲは切り取られていないから、ピンと長く伸びているのだが、それをちょっと引っ張ってみたのだ。  トラは、何の反応も示さなかった。  嫌がりも痛がりもせず、静かに座っていた。  私は何の考えもなく、さっきよりももう少し強い力で、トラのヒゲを引っ張った。  すると、なんとそのヒゲが、ぽろりと抜けてしまったのである!
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