2.母の実家の猫の思い出 その1

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2.母の実家の猫の思い出 その1

 私自身は猫を飼ったことはないが、両親の実家は両方とも猫を飼っていた。今回は、まず母方の祖父母宅の猫のことを書きたいと思う。  私が子供の頃のことなので、時代は昭和である。  母方の祖父母宅の縁側には、ガラス戸は付いていなかった。木製の雨戸だけである。  雨戸が空いている昼間は、猫は縁側から出入りし放題なのだが、ある雨の日、いつもは穏やかな祖母が、大声で怒鳴った。 「〇〇~!そんな泥だらけのまま入ってきてっ(入ってきちゃダメ)」  〇〇の部分には、猫の名前が入る。  多分、トラかチビかコロだったと思うのだが、もう忘れてしまった。今となっては、亡き祖父母が飼っていた猫の区別も、記憶が怪しくなっている。  あの日は、何日も雨が続いていたのかもしれない。地面は水たまりだらけで、ドロドロに湿っていた。  寒くなかったような気がするから、梅雨か夏だったと思う。  そんな日に外に出て行った猫も、当然、泥まみれになって帰ってきた。  そのドロドロに汚れた猫の姿を、私は見たと思う。縁側の木の板の上に、猫の足跡がスタンプされていたのは確かに覚えている。
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