2.母の実家の猫の思い出 その1

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 祖母は、猫を軒下に追い払って、「自分で体を舐めて、綺麗にしてから入ってきなさい」という意味のことを、東北弁で命じた。  その後、どのくらい時間が経ったかは正確には覚えていないが、さっき泥んこに汚れていた猫が、フワフワの綺麗な姿になって、家の中に入ってきた。  祖母は猫を褒めた。 「そうそう。ちゃんと綺麗にしてから入ってくるんだよ」みたいなことを言っていた。  子供だった私は驚いた。  さっきまでドロドロに汚れていた猫が、祖母に怒られて、綺麗に己の身を整えて、家の中に入ってきたのである。  どんなふうにしてあんなに綺麗になったのかは分からないが、自力で体中の毛についた泥を舐め取り、体を震わせて、濡れた毛から水気を飛ばして乾かしたのだろう。それ以外に方法はない。  なら、初めからそうしろよという話しではある。そうすれば、猫も祖母に怒られなかった。  猫ならどの猫でも、泥だらけの自分の体を、自分で舐めて綺麗にできるのだろうか。  おそらく、そうだろう。ほぼ毎日、うちの周辺を徘徊している数匹の猫は、きっとそうしているに違いない。  猫によっては、泥だらけで自分のうちに帰ったら、飼い主さんにお風呂に入れてもらっているという可能性もあるかもしれないが。
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