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1.サビ猫について
私がサビ柄の猫というものに初めて出会ったのは、就職で上京してからである。
それまで私は東北地方に住んでいて、サビ猫という猫が存在することすら知らなかった。
初めてサビ柄の猫を見た時の衝撃は忘れられない。
場所は自分が当時住んでいたアパートの駐車場で、あやふやな記憶だが、猫のほうから近付いてきたような気がする。
少なくとも、猫が逃げなかったことは確かだ。後から知ったことだが、サビ猫はとても人懐こいらしい。
その、黒ベースの体毛の、ところどころに薄い茶色の毛が混じっているという、珍妙な毛色の猫の姿に、私は驚愕した。
その顔は、半分から黒と茶色に別れていたような気がするが、今となっては定かではない。
「うわ、すごい顔の猫」と、猫に向かって小さな声で呟いたような気もするが、本当にそう言ったのか、正確なところは覚えていない。
どちらにせよ、猫は怒らなかった。当たり前だが。
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