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「本当かい?」
「うん! 神様ってねとっても優しくてね。それにね、モフモフしてるんだよ」
「モフモフ? そりゃいい」
それから私は真口様と遊んだ時の事を自慢げに話した。それはもう口が暴走列車と化した噂好きのおばさんの如く。どうやら私の中の眠れるばば様が一時的に目覚めてしまったらしい。早急に封印しないと。
でもまだばば様は寝ぼけていたのか真口様が天笠千代さんのお墓を探している事に関しては一切言わなかった。私は一応昔から口が堅いらしい(別に真口様に口止めされていたわけではないが)。
「それは本当かい?」
いくら神様の存在を信じているといってもこんな話を聞かされた普通の人はそういう反応をするもんだ。ましてや八歳の少女の言葉なら尚更だ。
「ほんとだもん!」
「他に見た人は?」
「だって私が出してあげたから他の人に秘密なの」
「じゃあ僕はいいの?」
「それは……」
私の口ごもりと男の(何か考えているのか)黙った時間が重なると、どこからか聞こえてくる蝉の声だけが会話を続けた。
するとその状況を破るように隣から手を叩く音がひとつ。
「そうだ。それじゃあ証拠って訳じゃないけど、僕も会わせてくれない? その神様に」
次は私に考える番がやってきた。どうするか。それを子どもながらに考えているとある事に気がついた。私は別に誰にも言うなと口止めされている訳じゃなければ、バレてはいけないのはあくまでも神主さんだけだということに(しかもそれも私個人の問題だ)。
そもそも真口様が神様であるとバレたくないのは私で、しかもそれは神主さんに怒られたくないから。だから神主さん以外に対して必死になってひた隠しにする必要はないのだ。当然ながら外から神主さんに伝わる可能性はあるけど、この男は島外の人。その心配もない――と思う。
でも私の答えはその瞬間決まった(まぁ当時はここまで深くは考えてなかったとは思うが)。
「絶対内緒だよ?」
「神様に誓って」
「じゃあレッツゴー!」
自分だけの秘密も悪くないがそれを共有出来る人がいるのもそれはそれで悪くないものだ(特に自分が教える立場の場合は尚更に)。私はすっかり気分よくなっていた。
そんな私を先頭に男は真口神社へと向かった。
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