14人が本棚に入れています
本棚に追加
/137ページ
過去17
「おい。そんな話は今いいだろ。早く訊いてくれよ」
すると一歩後ろに居た細身の男が少し脅えた様子で太った男を急かした。
「わーったよ。落ち着けって」
そんな細身の男へ雑に返事をすると太った男は笑みを消した顔を私へ向けた。そして一歩二歩と私の方へ歩みを進め始めた。
「お嬢ちゃん。俺らちょーっと探してるもんがあってな。それを教えてくれる――」
言葉を口にしながら男が手を背中へ回そうとしたその時。その手は体の横(まだ手が見えている状態)で手首を掴まれ止められた。
「怪しい二人組と少女が一人。穏やかじゃなさそうだね」
男の手を掴んだのは、どこから現れたのだろう寿々木さんだった。
そして彼の柔らかな笑みと男の無表情が向かい合う。
「別に俺らは――」
「さっさとそこを真っすぐ行ってこの森から出ていった方がいい」
手は掴んだまま寿々木さんはもう片手でその方向を指差した。その後、男の耳元へ顔を近づけたが私には何を言っているのかは聞こえなかった。
でも寿々木さんが離れ手も解放すると太った男は手首を摩りながら「行くぞ」ともう一人と共に指の方へと歩き出した。
その後姿を監視するように暫く見つめていた寿々木さんだったが、二人の距離が離れると私の方を振り返った。
「大丈夫だったかい?」
「うん。でもあの人たち何もしてないよ?」
「でももしかしたら危ない目にあってたかも。人は見た目によらないんだよ。どんな人間だって心に闇を宿してるんだ。気を付けないと」
これまでに人間関係で何かあったのだろうか。それはそう疑問を抱くような口ぶりだった。
最初のコメントを投稿しよう!