『わたしの恋に引導を。』

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 戻ってきた康之先生と一緒に、中庭の木の下へ移動する。 「康之先生、わたし。──わたし、先生が好きなんです」  あまりお時間取っちゃいけない、と単刀直入に告げたわたしに、先生はさすがに驚いたらしくて息を呑むのがわかった。  いつも落ち着いた先生には珍しく、明らかに目が泳いでる。困らせてる? わたし。 「……あー、えーと。──ごめん」  大丈夫。こんなの想定内、だから。  必死で自分に言い聞かせているわたしに向けて、康之先生がゆっくりと口を開いた。 「実は、その。長いこと交際してる人が居るんだ。隣の市の女子校で教師をしてるんだけど、お互い仕事が忙しくてここまで来てしまって。でも、その彼女しか考えられないんだ。……生徒に何言ってるんだって感じだよなぁ」  先生が、真摯に正直に話してくれているのはわたしにも伝わってる。 「俺は、──屋敷がどうとかじゃなくて、俺は君には応えられない」 「そ、そうなんですね。先生くらい素敵な方なら、お相手がいない筈ありませんよね。すみません、わたし。すみません、忘れてくださ、──」  鼻の奥がツンとして、声が詰まる。
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