『わたしの恋に引導を。』

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「見ての通り、俺の方が小さいんだ」  突然の康之先生の声には、卑屈な響きなんて全然含まれてなかった。 「普通は男が大きくて当然だし、そういう意味では釣り合わないけど。お互いにそういうの気にしないから、俺たちは釣り合ってるんだよ」  自分で言うことじゃないけど、なんて先生はちょっと照れくさそうにしてる。  こんな表情、初めてだわ。この三年、ずっと、ずっとこの人を見つめてたわたしには見せてくれなかった、顔。  ……先生、その方と居て幸せなんですね。 「彼女、屋敷より高いよな」  微笑んで静かに声を掛けてくれる康之先生は、きっとわかってるんだ。わたしがこの目立つ長身を気にしてること。  いくら卒業したからって、生徒に個人的なことを知らせるような人じゃないわ。いい気分で調子に乗った、わけじゃない筈よ。  これはきっと、わたしのため。  固定観念に囚われない相手に出逢えるように、って意味……? 考え過ぎかもしれない、けど。  せめてそう思ってていいですか? 先生。
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