21人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
一瞬びっくりはしたものの、わたしは冷静に彼女に問い掛けた。
「わたしでいいの?」
「あゆ美先輩『が』いいに決まってるじゃないですか! お願いします!」
食い気味に返して来る彼女に思わず頬が緩む。
「わかったわ。でも、……取れるかしら?」
糸でしっかり縫い付けてあるボタン。どうすればいいのかな、って戸惑うわたしに。
「屋敷、これ使えよ」
少し離れたところにいたらしい野上くんが、つかつかと近付いてきて何かを差し出した。
つまみをスライドさせて刃を出すタイプの、ごく小さな丸いカッターナイフ。『使用済み』なのは、彼の姿で一目瞭然だったわ。
全部のボタンがなくなって、前が閉じられない状態のジャケット。カッターナイフを持つ手の袖口にも、ボタンはひとつも見当たらない。
凄い。こんなこと本当にあるのね。学園ドラマみたい。
……確かに前生徒会長で人気があったのは知ってるけど、ここまでだとは思わなかった。
最初のコメントを投稿しよう!