『わたしの恋に引導を。』

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 一瞬びっくりはしたものの、わたしは冷静に彼女に問い掛けた。 「わたしでいいの?」 「あゆ美先輩『が』いいに決まってるじゃないですか! お願いします!」  食い気味に返して来る彼女に思わず頬が緩む。 「わかったわ。でも、……取れるかしら?」  糸でしっかり縫い付けてあるボタン。どうすればいいのかな、って戸惑うわたしに。 「屋敷、これ使えよ」  少し離れたところにいたらしい野上(のがみ)くんが、つかつかと近付いてきて何かを差し出した。  つまみをスライドさせて刃を出すタイプの、ごく小さな丸いカッターナイフ。『使用済み』なのは、彼の姿で一目瞭然だったわ。  全部のボタンがなくなって、前が閉じられない状態のジャケット。カッターナイフを持つ手の袖口にも、ボタンはひとつも見当たらない。  凄い。こんなこと本当にあるのね。学園ドラマみたい。  ……確かに前生徒会長で人気があったのは知ってるけど、ここまでだとは思わなかった。
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