20人が本棚に入れています
本棚に追加
そして、皮を脱いだ実可はというと。
マウントを取ることはやめて、素直に2人組を罵ることにしたらしい。
休憩ルーム方向の壁に向かって舌を出し、中指を立てながら声には出さずに4文字言葉を繰り返していた。
我ながら本当に、バッカみたいな姿だった。
でも、自分をないがしろにする彼氏の容姿を盾にマウント取ってるバカより、こっちのバカのほうが何倍もマシに思えた。
「実可、なにやってんの」
後から入ってきた彩香が呆れている。
「いやなんか、こっち方向に悪霊がいるみたいな気配がしたから。退散するようにおまじないしてた」
いいチャンスを貰ったので、空調ダクトを通っていく程度の大声で言う。
今俯瞰で見ている実可からは、直後に休憩ルームを気まずそうに出ていく2人組が見えた。
直接言い返して泥沼の攻防を繰り広げたわけじゃない。
正義の自分が、悪の2人組を懲らしめたわけでもない。
それでも、なんだかちょっとだけ小気味よかった。
「さあ、次に行きましょうか」
促す望一の手には、薄い皮の2枚目。
物理的な重量の変化なんてほとんどない筈。
それなのに、実可は自分の身体が軽くなってきている気がした。
最初のコメントを投稿しよう!