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また黒い霧のなかを進む。
すでにもう、次を楽しみに思うようになっていた。
視界が開けると、そこにはずいぶんと懐かしい場所が現れた。
大学のサークル室。
『海外ドラマ研究会』の狭い部屋だ。
合皮の安っぽいソファセット1組でいっぱいになる部屋に、ドラマを観るためのモニターがひとつ。
奥の棚には、歴代の先輩たちが録画したVHSのテープや、聞き取りで再現した台本などの”遺物”が詰まっている。
そのソファで肩を寄せ合って座っている男女、町戸と美梨亜。
そして、ドアを開けた格好のまま強張った表情でそれを見ている実可。
この瞬間、思い出せる。
実可は、都心にある外国語大学の出身だった。
『海外ドラマ研究会』は、授業では扱わないスラングなどをドラマから学ぼうという趣旨のサークルだ。ただあまりにも地味な目的のせいか、所属学生は全学年合わせても8人しかいなかった。
しかも男女比3:5。
必然的に、恋愛関係から力仕事の手伝いまで、男性部員の取り合いのようなことが度々起こった。
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