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そして男性部員の1人町戸と、実可は一時期付き合っていたのだ。
実可が入会したとき、町戸はひとつ先輩だった。
HIPHOP文化に造詣が深く、相当コアなスラングにも詳しかったので、みんなに重宝されていた。もっとも本人は至って地味な人間だったが。
実可が入ってから10ヵ月ほど経ったところで付き合い始めたのだが、翌年、新入生が1人入ってきてから、状況が変わった。
町戸がその新入生、美梨亜とも付き合い始めたのだ。つまり、二股だった。
美梨亜は高校生のときから親や学校の目を盗んではクラブに通っていたそうで、町戸と同じように、HIPHOP文化と馴染みが深かった。
しかも理論の町戸に対して、実地の美梨亜。
自分の彼氏が夢中になっているのは、すぐにわかった。
それで実可は身を引いたのだ。
2人のために、と言って物わかりよく。
実はこの三角関係は、部員たちの格好の話の種だった。
派手で明るい美梨亜と常に比べられているのを感じていて、それがなにより辛かった。
だから綺麗な理由で事の始末をつけることができて、満足した。
そういう記憶だった。
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