◆5 実可:サークル室

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そして突然、時間が飛んだ。 次に見えたのは。 部室での気まずい遭遇から数日後、町戸だけを呼び出し、別れ話を切り出した古臭い喫茶店の情景だった。 学生当時実可が住んでいた安アパート近くの寂れた商店街に、ひっそりと人目を忍ぶようにあった店だ。 1人取り残され、冷めたコーヒーを啜っている大学生の実可。 渡していたアパートの合鍵を返してもらったのが、そのままテーブルの上に載っている。 別れ話は終わった後だろう。 「ずいぶん、物分かりが良かったんですね」 「まあね。それがあたしの賢いところだと思ってた。この頃は」 「今は?」 「別れる、って結果は変わらないと思う。心が離れちゃったものはどうしようもない。でも、傷ついてないフリをするのは、どうかな。吉池への対処方法が今なってないの、この時が原因だったのかも」 説明しながら、そんな感想が持てるようになっているのが自分でも意外だった。 「では、皮は」 「お願いします」 即答だった。 実可はすでに、化けの皮を取った自分がどんな態度に変化するのか、期待するまでになっていた。 今回、望一が書き込んだのは。 『周りの評価を気にして一過性の悪口も言えない、賢いふりをした女』。 ほお、と思ったとたんだった。
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