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天川夏織様
サギ
https://estar.jp/novels/25938483
私も「カレシのためにマフラーを」と「初めての海鼠」でやったことがありますが、本作品は全編がセリフで構成された漫才スタイルです。
いやこれもう、このまんま漫才のネタ本にしていいんじゃないかと思うほどの高い完成度ですよ。下手な■-1芸人よりよっぽど面白いかと。これは是非朗読してもらって音で聞きたい作品ですね。濱口屋さーん、当確一丁!
オレオレ詐欺という現代の描写も的確ですし、ツッコミ役の銀行員の苛々度合いが見事です。
漫才というと吉本ですが、その吉本のスクールでは「1字にこだわれ」と教えられるそうです。「たった1字でも、削ってセリフを短くしろ」と。
これはエブリスタでも秋月一成さんが自作の拘りとして挙げられてまして、秋月師いわく「1セリフ50字以内」という枷を掛けているとか。
エブリスタは運営母体が変わり、マンガ原作などよりメディアミックスな方向へシフトするものと思われます。そうした時に絵のスペースを削ってしまう「長セリフ」はどうしても不利なんですね。……いえ、別に某「真実はひとつ」の少年探偵を揶揄しているわけではないですが。あれはトリックを説明する関係上、仕方ない面があるんですよ(ふぉろー)
実は。
地の文には、長くなりがちなセリフを途中で切って読みやすくさせるという効果があります。長セリフを2つか3つに切って間に「太郎はゴロリと横になって、こう続けた」とか入れることで、ぐっと読みやすくなるんです。
なので、こうした地の文を排除した作品は「短いセリフ」での勝負を必要とする文章力が問われるんですね。PCで読んだ時に2行以上にならないセリフ回しには、そういう深い拘りを感じます。
そして、この作品もオチがいいです。まるで落語のようにキレイに落ちるところが、落語好きの私として気にいっている作品です。
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