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西園寺 亜裕太様
お母さんオーディション
https://estar.jp/novels/25819116
一言、『上手いなぁ』と唸った作品です。
作者の西園寺 亜裕太様は、妄想コンその他のイベントでちょくちょくお名前を拝見する実力者だけあって、その構成力と発想力には手慣れたもの感じ取れます。ちなみに私のオススメは「オンライン○○」でトンデモ賞を受賞された「オンラインコンビニ強盗」です。
基本的に、コメディっていう分野は技術が物を言う世界なんですよね。セリフまわしの軽妙さ、ボケと突っ込みの掛け合い、テンポ、メインのギャグを何処に入れて、どう『下げ』を入れるのか……。本作はそれらが見事に計算されている作品です。
こういう技は普段からコメディを書いていて、なおかつ客観的に自作を評価していないと身につかないものだと思うんですよ。それだけの影の修練・鍛錬が作品全体ににじみ出ていると言っても過言ではありますまい。
例えば「テンドン」と言われる技。
これは同じギャグを繰り返すことで「何でやねん!」と突っ込みを入れるもので、一説には『天丼にはエビが2本乗っているから』が語源と言われています。……ビンボーな私は1本の天丼しか記憶がないのですが(泣
本作では『ご飯の量』という摩訶不思議なテンドンが出てきます。これが、物語自体にシュールさと面白さ、スピーディーさを演出しているのです。
また、テンドンには『微妙にずらす』という技があります。
拙作で恐縮ではありますが例えば『初めての海鼠』では、「ナマコ」「タコ」「ホヤ」「アワビ」と『見た目は悪いけど食えるもの』をテンドンした後に、あえて「フグ」という『食えないもの』を混ぜて『ずらし』を入れてあります。
同様に「お母さんオーディション」と言いながら「お前、お母さんちゃうやろ」という絶妙なずらしが見事ですね。
下げと結文の見事さも含め、全身全霊のコメディ作です。
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