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その夜、私達三人は沢山話して、いっぱいお酒を飲んだ。
「美子、今日はもう泊まっていきなよ?」
「うん。そうしようかな?」
私の提案に、美子はそう答える。
元々そのつもりだったのだとは思う。
実際、美子は何度かこの家に泊まりに来ている。
時計の針を見ると、もう零時近くて。
電車も無くなる頃。
そして、清太もお酒を飲んでいるから、運転も出来ない。
美子はもう、今夜は帰れない。
タクシーでは帰れるとしても、実家迄はけっこう距離もある。
私のスマホが、電話を着信して鳴る。
その相手は、見なくても分かる。
美織さん。
私は二人に断り、その電話に出た。
「美織さん?どうしたんですか?」
『そろそろ頃合いかな?と思って電話したの』
美織さんは、クスクスと笑っている。
私が事前にお願いをしていて、そうやって美織さんが電話を掛けて来てくれた。
「え、美織さん大丈夫ですか?
…分かりました。
すぐに行きます」
そう言って、私は美織さんからの電話を切った。
「どうしたの?」
清太にそう訊かれ、美子を見ると、
同じような表情を浮かべている。
「美織さん、ちょっと旦那さんと揉めたみたいで…旦那さん出て行ったらしいの。
今、泣きながら電話があって。
気持ちが落ち着く迄、私に側に居て欲しいって」
美織さんの事は前々から清太には話しているから。
私が美織さんと、バドサークルを通してとても仲良くしている事を知っている。
「いや、でも、もう電車無いだろ?」
「急げば、最終には間に合うと思うけど。
でも、美織さんの家近いから、タクシーでもそれ程お金掛からないと思う」
「そうか」
「清太、美子ごめん!
すぐ帰って来るから。
美織さんが心配だから、ちょっと行って来るね」
駄目だとか言われないように、そう押しきる。
「うん。お姉ちゃん早く帰って来てね」
そう言う美子の顔が、嬉しそうだと思った。
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