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「あ、私そろそろ帰るね?」
わざとらしく、腕時計を見る。
時刻は21時を過ぎた頃で。
クラス全員が揃い、場が盛り上がって来た頃。
「え、花純帰るの?」
そう言う京花に。
「ああ。清太が待っているもんな」
その志田君の言葉に、曖昧に頷く。
それを肯定だと捉えて貰えるように。
京花と志田君と、同じ輪に数名居た級友達に、お先に、と告げると。
私は店を出た。
店は半地下になっていて、階段を上り地上に出ると。
結城先生の姿を探し、走る。
JRじゃなく、地下鉄かな?
そう思い、その二つの道の分岐点で立ちすくむ。
そうしていると、
背後から足音がした。
振り返ると、そこには結城先生が立っている。
「やっぱり、お前は俺の事を追い掛けて来ると思っていた」
その結城先生の言葉に、え、なんで、と戸惑う。
「お前が昔、ずっと俺の事を見てたの、知ってた」
どれだけ見つめても、この人と視線が絡み合う事はなかったけど。
そうやって、知っていたんだ。
「結城先生…私…」
一体、私は何を言おうとしているのだろうか?
今さら、告白?
いや、今さらだから言えるのかもしれない。
私もこの人も、結婚しているのに。
「先生が好きです」
そう告げると、結城先生はその目を細めた。
「だろうな」
そして、小さく笑う。
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