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サクラが歓声を上げると、他もなんとなくその気になる。
その気になって、同じように歓声を上げる。
人心とは川の流れである。
しかし、大きな岩が川の中心に置かれれば、川は一瞬二つに分かれる。
別れてもすぐに一つになるが、その川はもう、さっきとは別の川かもしれない。
そして、川に一石が投じられる。
「異議ありいいぃぃぃッ!!」
突然の咆哮が、スパノヴァルディアに2度目の静寂をもたらした。
フィリア王は大きく目を見開いた。
なぜか。
その咆哮はフィリア王の背に向けられたからである。
背後の影から、その刺客は現れた。
ウィニン・ビーンの目は、まさしく獣のそれだった。
その目を振り返って確認した時、フィリア王はその気迫をもろに受ける。
廃止など、絶対にさせはしませんよ……そうとでも言いたげな目だった。
「……衆愚め」
フィリア王は最後の敵を見据える。
「公開討論をしましょう。受けてくださいますね」
先ほどとは打って変わり、ビーンは落ち着いた大臣になった。
フィリア王はその申し出を受ける必要はなかった。
王にとって、「暴君特権」で大臣の処刑を行うことなど容易かった。
しかし、それが本当に面白いのか。
王として、配信者として、どの選択がエンターテイメント足りえるのか。
すぐに結論は出た。
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