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ある小学校での話
4時44分。
その時刻に観覧車に乗ろうとすると、開いたドアにはすでに乗客がいたの。
あれ? なんか先に乗ってる人いますけど。そう目で訴えても従業員さんは知らんぷり。
気づいてない、というより見えてないの。
だってその乗客は幽霊だったのだから!
「きゃー怖い!」
六年二組の教室では、私・ミサを含めた仲良し四人グループが怪談話に盛り上がっていた。
右隣のナナちゃんが私にしがみつく。左隣のカオリちゃんも冷や汗を垂らしている。かくいう私も背筋に寒さを感じた。
それぞれの反応を見て語り手のマーちゃんが満足そうに頷く。
「つまりフェアリーランドの観覧車を4時44分に乗ると幽霊と相席になる可能性が高いってわけ。超ワクワクするでしょ。幽霊と乗車とか。だからあたし思いついちゃった」
「思いついたって?」
私がマーちゃんに聞くとマーちゃんはニヤリ。
「みんなでフェアリーランドに行って真相を確かめてみない?」
マーちゃんの言葉にナナちゃんとカオリちゃんはおおーっと拍手する。
「あたしとナナ、カオリ、ミサの四人でフェアリーランドに行って、4時44分に観覧車を一緒に乗るの」
「面白そう!」
「マーちゃん天才!」
他の二人は目を輝かせていたけれど、マーちゃんの提案を私だけ全力で横に首を振った。そんな話とんでもない。
「いやいや絶対いやだよ! 幽霊のいる場所にわざわざ行くなんてナンセンスだよ。意味ある? ていうか怖いよ」
「もう、ミサってばノリ悪すぎ」
「だいたい行くってどうやって行くの? ちゃんと計画してるの?」
私が聞くとマーちゃんがふふんと笑う。
「あたしたちもうすぐ小学校卒業でしょ。その記念ってことで四人だけで卒業旅行するの。フェアリーランドならバス一本で行けるし乗り換えの心配もない。ママたちも四人で行くなら許可してくれるよ」
計画性もばっちりだとは。
マーちゃんたらぬかりないな。
でも私は絶対嫌だ。
幽霊とかオカルトとか大嫌い。
得体が知れないしそもそもそんなのが存在してる意味がわからない。
それに私は小さい頃からお化けの部類が苦手で、幼稚園の頃遊園地のお化け屋敷を両親に騙されて入った時には大泣きして一日中父にしがみついていた記憶はまだ残っている。
正直今の怪談だって一人抜け出したかった。
情けないけれど冗談じゃなくお化けや幽霊が怖いのだ。
「卒業式は来週じゃん。だから今週の土曜日に行こう」
なのにマーちゃんは話を続行して日時と持ち物まで決めていた。
こうなった彼女は止められない。
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