猫とおばあ

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 10年連れ添った猫が死んだ。  初めて家に来た時はぴょんぴょん飛び回る小さく真っ白な毛玉っだったのを覚えている。  マシロと名付けられた小さな毛玉の様な猫はいつも元気いっぱいだった。小さかった私はいつもリボンで一緒に遊ぶ。  マシロは短い尻尾を誇らしげにピンと立てお尻を振ると勢いよく飛んでくる。それが楽しくていつもリボンで一緒にマシロと遊んでいた。  おばあちゃんに一度、紐で遊ぶと猫が蛇を捕って来るからと怒られた。それ以来あまりリボンでは遊んでいない。  学校に行くときも遊びに行く時も、マシロは玄関まで必ず見送りに来てくれる。時々足に絡まって甘えたりもする。それが可愛くて抱き抱えようとすると全力で逃げ出すマシロはツンデレだった。  でもここ最近、歳を取ってからは見送りには来ず、リビングでお気に入りの座布団に乗りカーテンの隙間から差し込む日差しで一日中日向ぼっこをしている。  時々、大きな欠伸を一つすると顔を洗ってまた座布団の上で丸くなる。昔からするとモフモフ感は変わってしまったけど白い毛玉は健在だった。  マシロが一番大好きな家族はおばあちゃんだった。必要以上にかまってしまう猫好きな私から逃げるようにいつもおばあちゃんの膝の上に避難する。  かまって欲しくないマシロとあまりかまわないおばあちゃんは相性が良かったのだろう。  キャットタワーよりおばあちゃんの膝が大好きだったマシロ。  おばあちゃんのご飯をいつも分けてもらうマシロ。  おばあちゃんの布団で一緒に寝るマシロ。  仏壇にお供えしてあるお水を飲んで怒られるマシロ。  蛇や蛙を捕まえてきては家族を驚かせるマシロ。  お父さんの靴下の匂いを嗅いで変な顔をするマシロ。  知らない人が来たら箪笥の上に隠れるマシロ。  お風呂は逃げ出すマシロ。  お腹は太陽の匂いがするマシロ。  家中にマシロの思い出がある。破れた障子、ちょっと引っ掻いた痕のあるクロスの壁。マシロのトイレにご飯用の器。そしてお気に入りの座布団。時々おばあちゃんに隠れて一緒に遊んだボロボロになったリボン。今はまだ片付けることができない。  マシロがいなくなった家にマシロの思い出だけが残る。  そして何年かしたら、たまにしか思い出さなくなっちゃうかもしれないけれど大好きだったマシロ。 一年ほど前に認知症になったおばあちゃんが今日もマシロを探している。
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