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ライチの思わぬ告白に日和は戸惑った。
「困ってる…」
「そ、それは…ごめんなさい…」
「知ってる。旦那も子供もいるんだもん…」
「いや、その…」
ライチは返答に困っている日和をそっと抱きしめた。
「オレは、本当は猫じゃなくて、人間なの…」
「……そんな冗談いらないから…」
「ホントだよ?オレはライチじゃなくて、流星って言うの…」
「本当に…?」
「猫に化ける人間なんて気持ち悪いじゃん…人間の姿を見せてしまったのは不本意だったけど、騙してごめん。」
「訳分かんない…」
「オレには手に出来ない物を持ってる日和が羨ましくて、欲しくなった。」
「…わたし、何も持ってないよ?」
「…家族…」
「ライチは家族だよ?」
私の言葉に首を横に振り、猫の姿になると背を向けて歩き出した。
「お別れだ…短い間だったけど、幸せをありがとう…」
「待って、ライチ!!」
ライチの元へ駆け寄るがそれに気づいたライチは走って去って行ってしまった。雲行きが怪しくなり、降られる前に戻った日和だが、それからライチに出会うことは2度となかった。
2022年2月23日執筆終了
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