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ピンポーン、とインターホンが鳴ったのは、帰宅の直後。エアコンのスイッチは入れたものの、まだ部屋が十分に温まる前だった。
「いったい誰だろう? こんな時間に……」
友人は少ないし、もちろん来客の予定もない。だからといって無視することも出来ず、玄関を開けると……。
そこに立っていたのは、先ほどの幼女だった。
「どこ? にゃんにゃーは今、どこにいるの!?」
噛み付くような勢いで叫び出し、勝手に家に上がり込んでくる。
私は止めようとしたが、彼女は器用な身のこなしですり抜けた。
「にゃんにゃー! にゃんにゃー!」
チラシにあった迷い猫の名前を、幼女は連呼する。
私だけがチラシを受け取ってあげたから、家までついて来てしまったのだろうか。だとしたら、なんだか恩を仇で返されたような気分だ。
「そんな猫、ここにはいない! 早く出ていきたまえ!」
大人として、きちんと叱ってみたのだが……。
振り返った彼女は、私の言葉を聞き入れるどころか、恐ろしい形相を浮かべていた。
「嘘! おじさん、にゃんにゃー知ってるでしょ? だって、私のこと見えたんだから!」
幼女が私の首に手をかける。
ゾッとした。人の手の感触ではなかったのだ。
まるで冷たい空気を押し当てられているかのような、掴みどころのない感覚だった。
それでいて、全く振り解けない。強い風の中で身動きが取れないみたいに、体の自由が奪われていた。
しかも、さらに不思議な出来事も発生する。体が触れたことにより、魂まで繋がったというのだろうか。彼女の記憶が流れ込んで来たのだ!
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