好きな人に『好きだ』と言わずに『好きだ』と伝える短篇 ~卒業篇~

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「いや、そんな。滅相もございやせん」  土下座でもしそうな勢いだ。 「っていうか、むしろ逆なんですけど。イメージとしては」 「でも、言われてみればそうね」  中学校の時の卒業式はボロ泣きした記憶があるし、そもそも私は自他共に認める程度には涙もろい。 「もちろん、みんなと離れるのは寂しいけど……」  と、言いながら後輩くん――彼の顔越しに見えるみんなが視界に入ってくる。  あからさまに、何かを期待している顔が、それはそれは綺麗に並んでいる。  ――花束を、現部長じゃなくて、彼が持って来た時点で簡単に察してはいたけれど。  だったら。  彼にはしばらくの間、みんなの話のタネになってもらいましょう。 「……すぐに追いかけてきてくれる、って信じてるから」  彼の首に腕をかけて、囁いた。
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