好きな人に『好きだ』と言わずに『好きだ』と伝える短篇 ~卒業篇~

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「卒業、おめでとうございます」 「わ。ありがとう」  言葉だけかと思ったら、まさかの大きな花束。少なくとも初春の太陽には負けないくらいに鮮やかだ。 「なーにこれ。サプライズ?」 「そういうこと、ですかね」 「……うれしい」 「もちろん、みんなからですけど」 「……まだまだね」 「何が……。あー、そっか。そうですね。なるほど。……やり直してもいいですか?」 「別にいいけど、いいわ。今の感じで思ってることはわかったから」  少しばかり照れた様子の後輩くんの頬に、こちらも顔が熱くなってくる。  3月。まだ雪も残っているのに。暑く感じる。 「そういえば……」 「ん?」 「泣いてないんスね」 「……あら、なぁに? 血も涙もない女、って言いたいのかしら?」
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