猫の言い分

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 散歩途中といった風情の老婦人だった。店主からカップを受け取り、ゆったりのんびり歩き出す。 「とてもきれいなバスだわ。『卒業』と聞いて少し残念だったけれど」  ここいいかしら。俺の返事を待つこともなく、婦人は向かいへ腰掛ける。 「おめでとう」  そしてにこりと俺を見上げた。  三毛太がのそりと寝返りを打つ。切れ耳の図体ばかりが大人の『仔猫』は、俺の足下で腹を見せる。婦人は息を吹きかけながら琥珀色の液体を。  俺はわずかに、口ごもった。 「……おめでとう、なんですかね」  知らない声。聞き慣れない声。二十数年慣れ親しんだ俺の声ではない俺の声。 「男の子はいずれソプラノを卒業するものよ」  あなたは少しばかり遅かったようだけど。からからと楽しげに笑う。 「嬉しいでしょう? 大人になるのだから」
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