14 俺の姫には○○がある。(蝶野 崇一郎side)

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14 俺の姫には○○がある。(蝶野 崇一郎side)

俺のお姫様は野郎だ。 ばっちり可愛いチンコついてる。 でも俺には宇宙一愛しい男。 綺麗な短い黒髪に、奥二重ながらきらきら輝くつぶらな茶色い瞳は無垢に澄んでいる。小さな鼻にやっぱり小さめな唇。小造りな顔。 身長は、まあ平均なんだろうが華奢で…骨や関節が細いんだろうな。 手首も腰も細くて、最初から放っとけない雰囲気はあった。 だから彼奴らも構いたくなったのかとは思うが。 最初の出会いがそもそも、俺がやってるチームのアジトにしてる廃工場に、伊吹が連れて来られた事だった。 何を思って?そりゃまあ…ヤれりゃどっちでも良いって奴は結構いるからな。 伊吹本人は、憂さ晴らしのサンドバッグにされるのかと思ってたらしいけど、憂さ晴らしの方向性が実は違ってたとか言ったら更にドン引きされそうなんで、それは黙っておく。 俺らが溜まり場にしてる廃工場は俺の祖父さんのやってたとこで、とうに移転してる。 何れはここも取り壊す予定らしいけど、敷地も広いし建物も未だそこそこ頑丈だから、期間限定で遊び場に使わせてもらってるだけだ。 いくら俺が馬鹿でも、流石によそ様の敷地や所有者のいる場所に勝手に足を踏み入れたりするのがNGな事くらいは知ってる。 …いや、他の連中は知らねえよ。俺ンチは代々不動産関係の仕事もしてるから、ガキの頃からうるさく言われてたってだけで。 あの日伊吹は、そのアジトに連れて来られた。 たまたま俺は前日からそのまま泊まってて、怠くて学校もサボっててって感じでずっと寝てたんだけど、いい加減腹も減って来たから飯でも運ばせようかと宇陀にLIMEしたんだわ。 ついでに買って来て欲しいもんもあったから、金渡そうと思って。 そうしたら、下っ端達が妙な奴を連れてこっちへ向かってるっつーから、部屋から出てみた。 で、ちょうど 数人に囲まれて連れて来られた伊吹に会った。 伊吹を連れて来た連中は、まさかこの時間に俺がいるとは思ってなかったみたいでえらくテンパってたけど、いなかったら何しようとしてたって話だ。 と言っても、俺だって別に他人にどうこう言える程 聖人君子じゃないが、それにしたって集団は駄目だろ、集団は。 俺だって自分の悪評は知ってる。タイプなら男女問わず手当り次第食い散らかすヤリチンという。 それを否定はしないが、手当り次第食い散らかした覚えはないんだよな。 こんなチームのトップなんかに据えられてると、トップのオンナって立場目当てに寄ってくる連中はそれなりにいたが、俺は結構好みにうるさいんだよ。だから断るんだが、それでも食い下がる奴は食い下がる。 なら、そんなに自信があるなら試してやるよってんでゴムフェラさせる。 そんな風に近づいてくるような連中、ビッチ率高いからな。性病とか心配だろ。 抱ける訳ねえから。 因みにその連中の中に今迄俺をイカせた奴はいない。 だって俺、遅漏だから。 そういった感じで、イカせられなかった事を理由に追っ払ってたから実際抱いた奴なんていないんだが、アジトの部屋には入れてたから、その場面だけを見ていた下っ端連中からは連れ込んでるように見えてたんだろう。 ソイツらの口から噂になり、俺は何時の間にか、最悪の野獣みたいな悪評高きヤリチンヤンキーみたいな事になっていた。ひでえ。 実際に俺が抱いたのは、中学ん時に付き合ってた女と高校に上がって短期間だけ付き合った先輩(男)だけだっつの…。 因みにどっちも色白、黒髪、純粋そうな容姿。 実は2人共、気が強過ぎて結局、浮気を疑われて別れたんだが。 そんな、あまりろくでもない遍歴(?)を重ねてきた俺が、あの日 伊吹に出会った。 適度に野暮ったい、何処からどう見ても初物。 小動物みたいな、少し怯えた顔つき。 瞳に薄く涙の膜が張って、ちょっとつつけば泣き出しそうだった。 悪くない、と思った。 昔飼ってたうさ公に似てるなって。 今思えば、その目を見た時、既に俺の心は持っていかれてたんだと思う。 こんな俺が、1度きりのつもりで手を出した。 首筋や鎖骨を嗅ぐと、仄かな体臭は心地よい匂いがした。何故か、安心するような、優しい匂い。 肌は健康的にスベスベして、まるで子供みたいだなと思った。 高くも低くもない、大人になりきらない声も、怯えているからなのか、従順な様子も。 抱いてみたら滑らかな肌が少し汗ばんで、しっとりと俺の肌に吸い付いた。 解して解して、やっと挿入れた伊吹の中は、熱くてうねっていて、好みのタイプだし初めてだろうから出来るだけ優しくしてやらないと、と何とか保っていた理性が そこで焼き切れた。 入念に解してやったつもりでも、初めてなんだから辛くない訳なんかない。 実際、伊吹は泣いていたし、途中からは苦しそうにしていた。 無理をさせてしまったと後から後悔したのは、俺がそのたった1回で伊吹にどっぷり嵌ってしまったからだ。 疲れ果てて気を失うように寝てしまった涙の跡の残る顔を見て、これからは大切に、大事に抱こうと思った。 俺の中ではその時点で、伊吹を傍に置くと決めていた。 その日から伊吹は、俺のこの世で唯一の大切な存在になった。 どんな事からも守ってやりたい。 この世界の、ありとあらゆる、何からも。 その清らかな瞳には、この世の穢いものは何一つ映さずに、俺のそばにいてくれ。
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