7 崇くんと僕 (伊吹)

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7 崇くんと僕 (伊吹)

僕の頭の出来は人並みの筈だと思ってた。 なのに、崇くんに初めて犯された時、僕は何をされたのか理解するのに時間がかかってしまった。 男女でするのと場所は違うから、これはセックスとは言わないのかな。 イジメの一環だろうか、などなど。 僕はあまり性に対する探究心とかが旺盛な方ではないから、同級生や友達のようにネットなんかで性の知識を得たりとか、カノジョを作って実践でするとか、あまり興味がなかった。 要するに、最低限のベーシックな知識のみで、他はほぼほぼ無知。 同性同士でナニを何処にどうするかなんて想像した事すらなく。ましてや、当事者になるなんて。 僕の興味はずっと全部花臣くんに向いていて、だからといって花臣くんと何をどうこうしたいって訳でもなかった。 綺麗で器用そうな長い指や、ミネラルウォーターを飲む時に上下する喉仏の動きや、濡れた唇にドキリとする事はあっても、その都度ずっと打ち消してきた。 王子様みたいにカッコよくて清廉な花臣くんに不埒な妄想を持つなんて大それた事、僕には出来ない。 キスしてみたいとか、そんな図々しい事を、頭の中だけでだって許されない。 花臣くんは、皆の花臣くんなのだ。 だけど、好きな気持ちだけは胸いっぱいにあるから、他の人に関心なんかいかない。 よって、確かに僕はこの歳になっても中身は同級生達より幼かったのかもしれない。 そこに、突然 男同士の性行為をぶっ込まれたので、僕は一時的にキャパオーバーしてしまって、泣く事も動転する事も忘れて、ただただ崇くんを見つめる事しか出来なかった。 でも、僕くらいの年齢で、同性とのセックス経験がある人なんて、そんなにいないと思うんだ。 呆然とするのは僕だけじゃない筈だ。 …いや、どうだろ?普通は途中で気づいて殴って逃げたりするのかな。 でも、明らかに腕力無いし…外は不良だらけってわかってたし…。 喧嘩も暴力も怖い僕には、逃げるって選択肢がなかった。 今となっては 1回だけで済んだかもしれないサンドバッグ役の方が良かったのかなあと思わなくもない。 でも、結構人数いたから、フクロにされてたらヤワな僕じゃ死んでたかもしれないけど。 あまり深く考える事の苦手な僕では、現状と比べてどっちが良かったかなんてわからない。 でも、毎日中で射精されて、直腸や腹の中で蠢いている崇くんの精子達が僕の体内を這い回っているのかと思うと、気が狂いそうになる時がある。 どんどん崇くんに侵食されていくみたいな、汚染されていくみたいな。僕が僕以外の何かになっていくような、そんな感覚。 一度だけ、崇くんに もう嫌だって言った事があるんだ。 週末で、強制お泊まり会って言われて崇くんちに連れてかれた時に。 でっかい崇くんの家には他に人気が無くて、殺風景な崇くんの部屋は広かった。 そんで、でっかいテレビとカーペットとソファとテーブルとベッドしかなかった。 でも買い込んでいったバーガーやポテトやコーラをテーブルに並べて、崇くんの部屋着みたいな服に着替えさせられた僕をソファの上で膝の間に座らせて、ご機嫌だったから。 今なら、聞いてくれるかなと思ったんだ。 でも、僕の言葉を聞いた崇くんは、一瞬無表情になったから、こりゃ殴られるかなと身を縮こまらせた。 崇くんは無表情だと凄く怖い。顔が整い過ぎてるからだと思う。切れ長の、シュッと吊り上がり気味の綺麗な目が冷たく見えるってのもあるかも。 けど、僕は殴られなかった。 代わりに崇くんは、唇を片方上げるだけの笑顔を作って、僕に言った。 「花臣、だっけ。 アイツ、サッカー部のエースらしいよな。」 「!!!」 ぼんやりしてる僕でもわかる。脅しだ。 崇くんは、何時の間にか花臣くんの事を知ってたんだ。 つまり、僕が花臣くんを好きだって事も。 なんてテンプレな脅迫だろう、って思ったよ。 あの時の崇くんは、完全に悪役で、ラスボスっぽかった。 それ以来、僕が崇くんを拒否するという選択肢は消えた。 最近姿を見なくなった、崇くんのグループの不良の1人に耳打ちされた事がある。 僕は崇くんの、オナホでセフレでペットなんだ、って。 聞いた時は、なるほどなって思った。 それなら、飽きたら捨ててくれるよね。 それだけが今の僕の希望。
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