友達より好き 彼女より好き (和樹シナリオVr)

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場所――和樹のマンション テーブルを挟んで向かい合う和樹となお。 なお『だから、理由を言って』 バン、となおがテーブルを叩く音。 和樹「理由は…おまえより、好きな人ができた」 なお『ふざけないでよ!二股じゃない!』 和樹「ちがう。俺の片想いだ」 なお『なにが片想いよ、バカじゃないの!?どういうつもりで付き合ってたの!?あたしはどうなるのよ!?』 和樹「だからお願いしてる。悪かった。終わりにしよう」 甲高いなおの声に対し、和樹の普段明るい声は静かだ。 なお『それであたしを捨てて、告白して、和樹だけハッピーエンドってわけ?』 和樹「そんな簡単な話じゃねーよ」 なお『じゃあなんで終わりなの!?なんであたしを捨てるのよ!』 和樹「おまえじゃ無理なんだよ。これ以上、好きになれない。好きでいられない」 なお『二年も付き合ったのにずいぶんひどい扱いじゃない!』 和樹「…それは謝るしかない。本当に、ごめん」 なお『謝られたって!』 和樹「ごめん」 なお『謝るな!!』 和樹「ごめん」 なお『謝らないでってば!!』 和樹「俺の部屋においてあるもの、全部持って帰ってくれ」 なお『イヤよ!』 和樹「俺ももうイヤなんだ」 強い口調の和樹。 和樹「タバコ、全部吸い終わるまでに、まとめて帰って」 コン、とメンソールタバコをテーブルに投げる音。 和樹「俺が手伝うのはイヤだろ」 なお『わかったわよ!サイテー!』 ガチャガチャと揃いの食器をゴミ箱に投げ捨てる音。 なお『なんにも持って帰らないから、捨てておいて』 和樹「気持ち悪いくらい潔いな」 なお『あたしのこと好きじゃないなんて言うような男、こっちから捨ててやるわよ』 和樹「そーいう切り替え早いとこは嫌いじゃなかったけどな」 なお『もういいし。バイバイ』 ばしっと合鍵をテーブルに叩きつけ、なおが乱暴に扉を開けてマンションを出ていく音。 和樹「タバコ、火もつけてないってのに…」 ためいきをつき、冷蔵庫から出したビールを開ける音。 和樹「会いたいなあ、ちーねえ…」 ビールを飲む音。 和樹「電話したら、迷惑かなあ…」 スマホをいじる音。 ピコっと着信音。 和樹「え、ちーねえ!?」 スマホにラインの文字が浮かび上がる。 千春【久しぶり、元気?   今日は残業で今帰り。   疲れたー ( ;∀;)】 和樹「ははっ、俺も疲れてるー。以心伝心ー。よしっ」 気合を入れて、ピッと通話ボタンを押す。 コール三回でつながる。 千春『もしもし、和樹?』 和樹「おー、俺。なんか、声聞くの久しぶり。元気だった?」 普段の和樹は年の割にはやや高めのトーン。 千春『うん、まあ。忙しくはしてるけどね。どうしたの、電話かけてくるなんてめずらしいじゃない?』 和樹「え、だって、ちーねえなんかあった時しか、俺んとこlineしてこないでしょ。なんかあったんなら、話聞こうかと思って」 千春『ごめん、そーいうつもりじゃなかったんだけど…』 和樹「えー、何いまさら気ぃ使ってんの。ちーねえ自分から電話するの嫌いでしょ。lineくれたら、俺からかけてやるからいいじゃん」 千春『なんて入れるのよ』 和樹「声が聞きたいって」 三秒ほどの沈黙。 同時に吹き出す。 千春『恥ずかしいでしょー!』 和樹「いーじゃん!だって俺はちーねえの特別でしょ」 千春『なんだ。知ってたの。和樹は特別だよ。好きだもん」 和樹「知ってる。彼氏の次に、だろ?」 千春『そう。だから、私も知ってるの、知ってた。隠してないでしょ』 和樹「ちぇー。手ごわいな、ちーねえは」 千春『ありがとね…。なんか、和樹と話すの、好きだわ』 和樹「うん、俺って、癒し系だから」 和樹はめいっぱい甘えた声で、ウインク。 和樹「お茶くらい、いつでもOKだからさ。ちーねえ一人で考え込むなよ」 千春『んー、わかってるつもりなんだけどねー…』 和樹「彼氏には、言えない…?」 千春『…そんなんじゃ、ないけど…』 カツンカツンとアパートの階段をあがる音に続いて千春のためいき。   和樹「もしもし?ちーねえ、ためいき?」 千春『もうすぐ部屋着く』 和樹「一人じゃさみしいだろ?」 千春『そうだけど、今から晩御飯だし』 ガチャっとドアの開く音。 千春『暗い部屋に帰るのって、なんか嫌よね』 和樹「じゃ、俺が毎日待っててやろうか?」 千春『バカ。彼女が怒るでしょ』 和樹(もう、怒られないけどな…) 千春『…和樹?』 和樹「俺、彼女と、別れた…」 千春『…え……そう、なんだ…』 和樹(ちーねえ、動揺してる?) 千春『ダメじゃない、ちゃんと、捕まえてなきゃ…』 和樹「ダメだったんだよ、彼女じゃ…」 ゴクッとビールを飲む音。 和樹「ちーねえ…」 千春『それ以上言ったら、ダメ』 和樹「ちーねえ。俺、待ってる」 千春『え…?』 和樹「それくらい、できる。待ってるから…いつか、言わせて」 緊張に震える声。 和樹「だからちーねえも、俺のこと、考えてて?」 千春『…わかった…』 和樹「よかったあ…。ブチ切れられたら、立ち直れないとこだった…」 和樹の安堵した声に、千春がくすりと笑う。 千春『ブチ切れたりしないよ。とりあえず、今日はありがと。また、連絡するね』 和樹「おー、待ってる。めちゃめちゃ待ってる」 千春『そんなに待たないで。連絡しづらくなるから』 互いにクスクスと笑いあう。 千春『パスタ冷めちゃった。また温め直すわ。じゃ、またね』 和樹「わかった。ちーねえ…好きだよ」 和樹は言い逃げして、通話を切る。 和樹「ごめん、ちーねえ。我慢できなかった。返事は待つから、言うくらい先に言ってもいいだろ…?」 タバコをくしゃっとつぶしてゴミ箱に投げ捨てる。 和樹「返事が来るまで、願掛け禁煙でもしようかな」 ビールを一気に飲み干す音。 和樹「あああ、電話待ちきれねえって!待つなんて言わなきゃよかった!」 ビール缶を握りつぶす音。 和樹「男は度胸!ついでに愛嬌!もひとつ愛情!俺は待つ!ちーねえ、めちゃめちゃ待ってるから…だから…だから、俺にもう一回言わせて。好きだって」                 了 202202222202
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