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＜人生を共にしたい人〜昌希side〜＞
中野さんが俺と美里の不倫が原因で起こった事だから部屋を直すことで手打ちにしたいなどと馬鹿な事を言ってきた、彩春が被害にあったことにはらわたが煮え繰り返っていたから、旦那さんの不倫が起爆剤となりストーカーになった挙句にモンスター化した訳で、ストーカー被害に関しての証拠を警察に提出して被害届を出してもかまわないと言うと掌を返すように態度が軟化した。
彩春の周りはどうして次々と問題が起きるのか、二人で出勤する事に対してとやかく言う人間がいるという、そもそも何故そんな事を言うのか不思議だが、この機会に住民票を移すことを提案した。
美里をストーカーと言いながら少しづつ囲いこんでいる俺も充分危ないヤツだと思う。
子供がいない伯父の跡を継ぐ事は高校の時にはもう決まっていて学生時代には宅地建物取引士の資格もとり、伯父からも業務についての説明を少しづつ受けているところだ。
マテリアルは春に退職する事が決まっているから、それを彩春にも伝えるために二人で祖母のところに行った。
大磯までの道のりはちょっとしたドライブデートのようで、楽しそうな彩春を見てこれから二人で色々なところに行き思い出を作っていきたいと思う。
部屋の工事の間は妹夫婦が泊まりに来てくれた、美里の時は人見知りをしない希未が珍しく苦手にしていて会話をすることが無かったが彩春とは結構ウマが合うようで安心した。
彩春は両親のことでまだ苦しんでいた。少しでも、その苦しみ悲しみを取り除いてあげたい。
彩春が誕生石でストラップを作ってくれた。
以前は手作りの何かを貰うのは重すぎて嫌だったが、好きな人からの物はこんなに気持ちが暖かくなるのかと初めて知った。
彩春の元婚約者が未だに彩春に接触していることが気になる。
以前から彩春に未練があるように思えて、普通に考えたら自分を騙した妹なんか関わり合いたくないと思うはずなのに結婚をするという段階で、彩春と近い位置にいたくて結婚をするようにしか思えない。
今回、接触してきた理由も妹の慰謝料のことで、そんなことをいちいち姉に知らせることなんか無いはずだ。どうしても勘繰ってしまう。
オンライン同窓会の参加者リストを見て、名前から顔を思い浮かべることができる人はほとんどいない。優とは中学・高校は同じで大学が別になったがずっと友人として、そして今では義兄弟としての付き合いが続いているからもちろんわかるが、それ以外は難しいと思いながら見ていると“田沼英子”という名前を見つけた。
優も気がついたようで、卒アルから北島英子という人物を見つけて写真を送ってきた。
写真を見ても、あまり記憶になかった。
この田沼英子があの田沼英子なら彩春の存在を隠した方がいいような気がして幹事に連絡をして彩春は不参加としたが、料理は参加費は二人分支払うとして届けてもらうように手配をした。
そして、オンライン同窓会の当日、画面に現れたのは写真とはまるで別人の田沼英子だった。
幹事から田沼英子が俺と直接メッセージのやり取りをしたいと連絡あった。
飛んで火に入る夏の虫ではないが、連絡先を知っておくことは何かの役に立つかもしれないと思い彩春に伝えた。
それが、まさかの彩春のやきもちを引き出す結果になるとは思わなかった。可愛いくて愛おしい反面、あまり不安にはさせたくない。
祖母のところに行った時、海を見ると落ち着くと言っていたから、ドライブがてら江ノ島にきた。
田沼英子からは鬱陶しいくらいにラインが来ていて、当たり障りのない返事を返していいた。その都度、彩春に見せていたが「もう見せてくれなくていいからね」と言われ、今は正直に言うとホッとしている。
［昌希くん今何してる？］
［昌希くんかっこいいからみんなに自慢したい］
［呼んでくれたらいつでもいくよ］
［中学時代、好きだったんだよ］
［好きになってもいい］
実に、返信に気を使う言葉がどんどん入ってくるのは正直に言って疲れる。田沼英子はこういう事を繰り返して一定数の男をストックしているのかもしれないが田沼英子への返信にかかる時間を彩春に使いたい。
江ノ島神社をお参りしてから仲見世通りをひやかしながら歩く。彩春は今まで自分の為の時間を消費していないと言う、これからは彩春の時間を消費して欲しいと、その消費する相手が俺であって欲しいと思う。
「大昔、父さんを好きだったことがあった事を思い出しただけ」と語った彩春に切ない気持ちになった。
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