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<春が来る>
「私の方は母さんしか呼ぶ人がいないから」
結婚式をどうするか、昌希さんは市ハウジングに行ってからだと、どうしてもハウジングのスタッフに気を使わせてしまうということで、ハウジングに行く前に籍と結婚式を済ませたいということだった。
「たしかに、いきなりやって来た次期社長の結婚を祝わない訳にはいかないよね。それって、スタッフからしたらちょと迷惑かも」
「ははは、確かに迷惑だ。3月の最終週は有給を当てるつもりだから、リゾートウェディングっていう方法も考えたが、こっちの親族だらけで彩春のお母さんは居心地が悪いだろうし」
「写真だけとかでもいいと思う」
「結婚式場のチャペルウェディングで親族だけで食事会っていうのはどうだろ?それなら3月下旬でも間に合うと思うんだ」
「うん、それでいいよ。それなら、熱海とかどう?」
「ばあちゃんのことまで考えてくれてありがとう。それに、熱海なら両親や優たちもちょっとした旅行気分になれそうだしな」
「忙しくなりそうだけど、楽しそう」
「披露宴は無いからその分、自分達が楽しみながら準備をしよう」
昌希さんは3月末で退職をして、市ハウジングへ行くことになる。私の方は今年の秋ごろを目処に退職をするつもりだ。
正月に母さんと話したところによると、やっぱり朱夏は悠也と結婚するようだ。ただ、裕也は子供が生まれるまで入籍をしないと言っていたらしいから結婚は夏頃ということだろうか。
二人が決めたことだし、関係ない。
庭の菜園は先月、小松菜とほうれん草が思いのほか良く育って毎日青菜の日々だった。
もう少し、日持ちのするものを植えようと考えて今月の下旬にじゃがいもを植えることにした。
社内は随分と落ちつきを取り戻しつつあり、付箋に加担した人達はお互いを告発しあった為、ほぼ全員判明し私には謝罪文を会社には念書の提出があった。
謝罪文が思いのほか多くて少しヘコんだ。
退職を決意してよかったとつくづく思った。
熱海の結婚式場に空きがあり3月25日を仮押さえして、おばあさまに会いに行く時に式場へ行くことになった。
母さんにいつ連絡しようと思っていたら、母さんから電話が入った。
「母さん、どうした?」
『ちょっと相談があるんだけど』
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