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慰謝料請求のきっかけを作ったのは私だけど、母さん本人が戦うべきだと思って、証拠データを弁護士さんに渡し、出雲の元奥さんに母さんの事を話すと相談にのってくれるようになったらしい。これは母さんの問題だから、私は完全に手を引いた。
そのこともあって母さんが変わったのかもしれない。
『お金が無いから払わないとか言い出したから、訴訟とその先の強制執行まで行くことを出雲さんたちと足並みを揃えて戦うことにしたから。どうせ、お金をもらう予定はなかったから全額が弁護士費用になったとしても構わないし、お金が無いとか言ってるけど、バカ旦那が頭金を出したマンションを賃貸にして自分は男に家賃を払わせている部屋に住んでるらしいから、あのマンションを処分させてやろうと思う』
短い間に随分と強くなった気がする。
「母さんが戦うのなら、応援するから」
『お父さんからは慰謝料をもらえない分、ささやかな復讐をしてやろうと思って』
「うん、そうだよ。自分だけ楽しんでいたんだし、どう考えても未だに未練があったとしか思えなえいでしょ。あの古いスマホをいつも持ち歩いていたとかパスワードが田沼英子の誕生日のままだとか、母さんに悪いけど気持ち悪かった」
『本当にね、10年前の自分に言ってやりたいわ。それで、家にある彩春のものはどうする?この間捨てていいって言われたけど、まだ取ってあるのよ』
「私のものは捨てていいよ、朱夏の物も残してあるなら捨てていいと思うけど、レンタルボックスとか借りてそこに保管しておくとか」
『それがいいわね、私の物も少しずつ移動しておきたいしお父さんを含めて断捨離しようと思っているから』
「父さんを断捨離ね、確かに1番いらないわ」
『今まで本当にごめんなさいね』
「ところで、朱夏はやっぱり細矢さんと結婚する気なんだね」
『考え直すように言ったんだけど、結婚しないといけないみたいな強迫観念に駆られているみたいで、まったく話にならないの、細矢さんも断ってくれればいいのに、入籍日の延期だけで何だかもうあの二人はよくわからなくて』
そうなんだ、でも私はもう関係ない。
「じゃあ、お部屋の方はいいのがあったら送るから」
『よろしくね。じゃあ』
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