<それぞれの春>

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美冬はやつれて、昔の面影がなくなっていた。 退院してからも時々、会って話をした。 美冬は不倫のことは何も聞いてこなかったことをいい事に、オレも不倫のことに蓋をしていた。 休みが続いて会社に居づらくなり退職をした。腰痛もあって次の仕事を探すのが大変だと言ったら家に呼んでくれた。 このアパートで3人は過ごしてきたんだと思うと、申し訳なさでいっぱいになった。 自分が住んでいたアパートを解約して、美冬のアパートで一緒に住む事になったが、朱夏はそれほどではないが、彩春が凄く怒っていた。 当たり前だ、オレのせいであの子はずっと苦労していたという。さらに、朱夏に婚約者を奪われたなど本当に申し訳ないと思った。 朱夏もきっとオレのせいで恋愛観がおかしくなっていたのかもしれない。 不倫相手の子を孕っているという。 彩春が食事に誘ってくれた。 許してもらえるとは思わないが、少しずつでも理解し合えるようになりたいと思い、叱られてもなじられてもいいと思いで喜んで出かけていくと、そこに田沼英子が現れた。 昔と変わらない美しさだった。 ああ、オレはこの人と何度も何度も愛しあったのに、投げかけられた言葉は残酷で、彩春によりスマホに入っていた動画が再生され、消してしまわなかったことを後悔した。 彩春にホテルに泊まるように言われ渡された一万円を握りしめてネットカフェに向かった。 今頃、彩春はあの画像と動画を美冬に見せているだろう。 彼女がどんな気持ちになるか、なぜあんなものをいつまでも持っていたんだろう。 後悔しても後悔しても し尽くせない 涙が溢れる。 とめどない涙とはこういうことを言うんだろう。 オレは、美冬を二度も裏切った。
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