<それぞれの春>

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つわりはそれほどひどく無かったから学生生活に支障をきたすことは無かった。 お姉ちゃんに卒業だけはしてと言われて、確かに4年間の学費を考えると申し訳ない気持ちはある。 だから、ちゃんと卒業だけはしようとおもう。 出雲先生のゼミは解体してしまって、ゼミ生は散り散りに他のゼミに移っていた。 私も、他のゼミに移り戸惑いはあったが無事に単位は取れそうだ。 卒業旅行の話がでたが、アルバイトも辞めてしまった今、旅費をどうやって出すかが問題だった。 私が妊娠していることで近場で楽しめるように晴子達が温泉旅行を考えてくれた。ちょうどその時、母さんが卒業式の袴のレンタル料金として5万円をくれたのでそれで旅費を払った。 袴を借りられなくなるから細矢さんに相談して5万円を出して欲しいとお願いしたのに断られた。本当に、ムカつく。婚約指輪もくれない、お姉ちゃんなんかカルティエのダイヤのリングを貰ってたのに、細矢さんだってお姉ちゃんに返された指輪を持っていたって仕方がないんだから私にくれればいいのに。 お姉ちゃんも意地悪ばかり言うから、頼りたくは無かったがこのままだと袴のレンタルができないからお姉ちゃんに5万円の援助をお願いしたのに断れた、晴子に相談したらワンピースを貸してくれることになったから卒業式はワンピースで行くことにした。 母さんにバレると面倒なので連絡をしないでいたら卒業式の朝、マンションに来てレンタルをしていないことがバレてしまった。 卒業旅行の資金にしたとは言えないから先生の奥さんに慰謝料として支払ったと言っておいた。 今までだって、仕事があるからと学校の行事に来たことが無かったのに、どうしてこう言う時だけ来るんだろう。 お姉ちゃんにレンタル料をお願いした時以降、連絡をしていない。 最近はすごく冷たくて、話もちゃんと聞いてくれなくなった。 そりゃあ、細矢さんのことは悪かったと思うけど、細矢さんだって、私にすごく塩対応だし。 お姉ちゃんの結婚のことを母さんに聞いても知らないとか言われるし、最近は疎外感を感じる。 卒業旅行は箱根の温泉になった。 晴子は細矢さんの同僚の管さんと付き合っていたが、一方的に別れを告げられたそうだ。細矢さんが言うには、管さんには本命の恋人がいたと言っていた。過去形なのはもう別れたんだろうか?それで、千佳がアルバイト先の男性を紹介してくれて車を出してもらうことになった。 合コン旅行のようになって、気がついたらカップルが出来上がってしまった。 細矢さんからは私とは関係を持つつもりはないと言われているし一回くらいならいいかと思って卒業旅行を楽しんだ。 桜が散って花が終わった後から葉が出てきて季節が変わっていっているのがわかった。 細矢さんは一応家に置いてくれるけど、本当に結婚をしていいのか、この子が父親のない子にはならずにすむが愛情をもらえないかもしれない。それでいいんだろうか? 産まれてしまえば、可愛く思うとかないだろうか? お腹をさすりながら自問自答しながら葉桜の下を歩いていた。
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