4105人が本棚に入れています
本棚に追加
勢い余って出てきてしまったが、行くところが無い。どこか安いホテルを探さないといけないがとりあえず会社に来てしまった。行くところが無くて会社って社畜かっと自分にツッコミを入れる。
フロアには半分の電気が付いていて誰かしらが残業しているようだがその人物は席を外しているようだ。
急ぎではないが残っていた仕事を始める。
仕事をしながらこの後どうすればいいか考えることにした。時間を見ると蜻蛉返りしてきたためまだ8時前だった。
作業の傍らホテルを検索すると安くても6千円くらい、できれば1週間は一人になりたい、そうなると4万2千円・・・高い
ウィークリーマンションを検索するとホテルよりも半額近く安そうだ。
「はぁ」
思わずため息が漏れたとき
「相馬?どうした?急ぎのものはなかったはずだが?」
盛大に?のついた表情で片手には紙コップに入ったコーヒーを片手に持った諏訪課長が立っていた。
「あの・・・」
嘘をつくのが下手で表情を隠すのも下手な私は咄嗟の言い訳ができなくて口ごもると足もとの大きめな荷物に気がついたのか
「少し待っていてくれ、後少しで終わるから。その後、飯でも食いに行こう」
そう言って席に着くと諏訪課長はキーボードを叩き出した。
課長がモテるのがわかる気がする。
誰にも相談できないと思っていたけど相談ではなくて愚痴を聞いてもらえるだけでも気が楽になるかもしれない。そう思うととりあえずやり始めた作業を私もこなすことができた。
「さて、行こうか」
話を聞いてもらえるかも知れないと思うと作業にも集中できていたのか、声をかけられるまで夢中になって資料を作成していた。
単なる現実逃避かも知れないけど。
「これから旅行で夜行バスとかでは無いんだよな?」
「えっ?はい。」
考えてみたら、旅行や出張のような荷物だ。
まさか家出ですとも言いにくくて「違います」とだけ答えた。
パソコンの電源を落とし、史料も引き出しにしまうと諏訪課長はすっかり帰り支度が済んで待っていてくれて、私が家出バッグを持ち上げようとすると自然な動きで家出バッグを持ってくれた。
「結構重いな、家出でもしてきたのか?」
その言葉にすっかり気が動転して「あはっ」と変な声を出してしまった。
「相馬は嘘がつけないんだな、だからこそ信頼出来るんだが・・・」
何か言いたそうな上司にやっぱり婚約者を妹に寝取られて家出してきたなんて言えそうも無い。
最初のコメントを投稿しよう!