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もちろんそんなことを繰り返していたら身が持たないので、代わりに魂の一部を対価にイタコ能力を使って無茶な仕事をこなしていた。
結果、借金は無事完済されて俺もスタントマンとして名が広まった。
そして、これで引退しようと決めた最後の仕事で、イタコを繰り返していた俺は英霊に魂を全て吸われ切って、天に召されたのだ。
それがどうしてこんな異世界で転生しているのかはわからないから、運命としかいいようがない。
イタコ能力を、人を傷つけるためになど使ったことは無かった。
今でも王の脇腹を指した時の感覚が手に残っている。
俺は、自分の手を見つめた。
金色の輝きはそこにはない。
ぐっと拳を握った時、誰かが部屋をノックした。
「ラヴァン、入るぞ」
扉を開けてツェリが入ってきた。
ベッドに座る俺の姿を見ると、ツェリは目を輝かせて走って抱きついてきた。
彼の尻尾は風を感じるほど激しく振られている。
「ああ、ラヴァン、目を覚ましてよかった。俺の女神よ」
「女神?」
「全身から金の鱗粉を放つ姿は、戦場に舞い降りた女神そのものだった」
「俺はただのヒトだっつーの」
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