本編

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「最後に言いたいことはあるか」 絢爛豪華な城の中、王座に座った獣人が問いかけた。 彼は黒い毛皮の大型獣人で、服に包まれていない部分から豊かな被毛を惜しげも無く晒している。 俺は彼の足元に膝をつき、首元には彼の配下に剣を突きつけられていた。 そして俺の傍らには先程首を跳ねられた陛下の亡骸が転がっていた。 「あなたの手に触れたい……」 思わず俺は、そう呟いていた。 俺の名前はラヴァン。 前世は日本人で映画なんかのスタントマンをしていた。 撮影中に不慮の事故で命を落とし、目を覚ましたらこの世界に転生していた。 俺が生を受けた家は王族とも血縁関係にある由緒正しい家柄で、そこで俺は何不自由なく育てられた。 そして元々スタントマンをしていたこともあって武術に興味があった俺は、トントン拍子に騎士団長へ就任。 長年戦争もなく平和な国でただのんびり庭で剣を振り回して暮らしていた。 この国の現状など何も知らずにーー。 この世界には2つの人種がある。 ヒトと獣人。 この2種の間には身分という絶対な隔たりがあった。
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